WEB MAGAZINE
2015年4月
5月4日(祝)ディーテクニック初心者向けサーキット走行会 2015 in 筑波サーキットコース1000募集中

講師:ドライビングアドバイザー 出来利弘
16,000円(10分×3回走行、タイム計測、保険料を含む)

サーキットデビューの方にも走り易いように細心の注意を払ってクラス分けを行なっておりますので、
ホンダS660 試乗インプレッション『S660の価値は世界唯一の存在』
HONDA S660に試乗した。2015年4月2日(木)に正式発売となったS660。試乗したαは218万円(税込)、βは198万円からだか走行性能に関する装備は共通。私はホンダビートとマツダロードスターと2台所有していた時期がかなり長期間あったので、久々に出たホンダのコンパクトミドシップスポーツに興味深々だ。
乗った感想を一言で言えば、『痛快ハンドリングマシン!』
小さなスーパーカーといった感じ。
S660は見るだけでワクワクし、クルマの周りには常に人だかり、カーマニアはもちろん、普段クルマに関心を持たないような一般の方々、通学途中の子供たちなどが寄ってきて「格好いい!」と言いながらずっと観ていた。
そう、まさしくスーパーカー現象。一般ディーラーの前でこんな光景を見たのはいったい何年振りだろうか。
格好良く、新しく、ちょっと可愛い。そしてそのサイズ感がどこか親しみ易い。
この感覚、これから先もずっと何年も続くのか?今だけなのか、それはまだ解らないが、今、この瞬間だけを捉えてもこれだけ、多くの人を幸せにしたのだから十分に価値あるクルマだ。
こんな格好いい、超コンパクトなスーパーカーが動くこと自体に感動する。
しかもそれは世界の頂点、F-1の世界で戦うホンダにしかできないパッケージングで完成されているものだ。
『S660は世界唯一の存在』そこにこのクルマの大いなる価値がある。
街行く人が振り返り、近寄ってくる。
フロントボンネットとエンジンフード開けた姿も格好いい
モーターショーで展示されたデザインコンセプトのイメージの再現度はかなり高い。
それを全幅1475mmという軽規格内で達成するレイアウト技術は世界屈指のもの。
これならワインディングでアウトインアウトのライン取りも自由自在だ。
低いボンネットとこのリヤデッキデザインはラゲッジスペースをほとんど持たないことで実現したデザイン。
フロントフード内は幌をしまうスペースがありますが、とても薄く、ラジエター直後のために熱を持ちますので手荷物は車内にしかおけないでしょう。身長170cmくらいのドライバーなら、シート後ろに薄いバックくらいなら置けるか?
絞り込まれたテールデザイン
ビート、ユーノスロードスター、S660
特徴的なドアノブが嬉しい。キーホールはかなり小さい
モーターショーのコンセプトカーを忠実に再現したドアミラー
コンパクトなヘッドライトはLED
テールもLED。未来的な造形でフロントとの統一感がある
センターマフラー!これは近年の国産市販車では稀少。
控えめなリヤスポイラーは速度が上がると可動するものが装着されていた
インテリアは未来的な造形でコクピット感覚に包まれる。
これもコンセプトカーのイメージにかなり近い
メーターはデジタルスピード計とその周りを囲むように9000rpmまで刻まれたタコメーター。
レッドゾーンは7700rpmから文字の書体が優しい雰囲気でクルマのキャラクターに合う
スイッチパネルの質感も上々。ハザードスイッチなどタッチも良い
助手席前のソフトパッドは適度な質感でスポーツコンパクトらしい
USBジャックカバーがあり、スマートにデザインされている。
手前にはスマートフォンなどを置くスペースがある
着座位置は低くドラポジがピタリと決まるコクピット。普通車のスポーツシートとして評価してもクッション性、ホールド性、共にノーマルとして申し分なく、妥協が感じられない。
革シートの質感
ステアリングの質感はデザイン、握り共に写真から想像するより、実物は良い。
カーボン調パネル類の質感などもちょうど良いライトな雰囲気。
電動パワステのフィーリングはとても自然でフィット流用とは思えない
軽自動車初となる6MTはギヤ比が実に適切で実に気持ちいい。これでクロスミッションのまま、6速化によって高速巡航への対応も可能。シフトフィールは横置きエンジンであるにも関わらず、スムーズでダイレクト感のあるもの。
クラッチは適度な重さで扱い易い。吊り下げ式のアクセルとブレーキ。ヒール&トゥーがし易いのがとても印象的だった。特にブレーキは素晴らしい制動力!
カーボン調ドアパネはプラスチックで、質感はそこそこ。オプションで質感をアップさせるパーツがある。
ドアの開閉音はしっかりとして上質な音に作り込みされている
しかしこのくらいのプラスチック感がちょうど良いのかもしれない
P/Wスイッチとリヤクォーターパネルウインドも電動P/W!
開けるとエンジン音がダイレクトに入ってきて、レーシーなサウンドを楽しめる。
もちろん換気にもなり、エアロボードのように風量を調整できる。
閉めれば静かで快適。助手席との会話も問題ない。
屋根を閉めてここを開けた時がもっともエンジンサウンドが大きい!
こんな遊び心のあるスーパーカー装備が標準とは実にホンダらしく素晴らしい。
(私なら仮に10万円オプションでも装着するだろう)
エンジンはミドシップ(運転席の後ろ)に搭載。横置きで少し搭載位置は高め。エンジンサウンドはDOHC3気筒ターボだが1300ccNAのようなフィーリング。スペックから想像するより普通なサウンドだが、16インチタイヤ(なんとアドバンネオバ!)をクロスミッションを活かしてグイグイと加速させる!レッドゾーンの7700rpmまでグィーン!という加速サウンドとシフトアップ時にはプシュ!というブローオフバルブのサウンドが楽しめる。5500rpmから最後は詰まり気味で(64PS自主規制のため?)、普通に乗るには嬉しいレギュラーガソリン仕様だが、これをハイオク仕様にして、マフラーとコンピュターで100PSくらいすぐにチューニング出そうなポテンシャルを持ち、それを封印しているかのように感じられる。
エンジン横スレスレのがっちりストラット周りと前後に貫通したボディフレームが頑丈そうで作りの良さに感心。
アルミサブフレームも仕様され、サスペンションの高い取り付け剛性を確保。ミドシップらしいリヤの接地性の高さと本格的なスポーツ走行に大きく貢献するだろう
サイズや質感のわかる写真
エリーゼが大きく見え、デザインの質感では負けていない
アバルト500と並んでも堂々としたサイズ感と質感が解るだろう
NAロードスター、マーチ、ベゼルとの並び
S660の走りは基本に忠実で素直なものだった。まさに楽しいスポーツカーへの直球勝負!走りのため、格好よさのために潔く割切られている。しかしその走りはホンダ往年のタイプRのようなカリカリではなく、穏やかにゆったり流して走っても楽しく、サスペンションはしなやかなものだ。コーナリング入口では荷重移動をそれほど意識しなくても曲がれる。ドライバー中心に旋回を開始する感覚はFR的でコーナリング開始後はエンジン重心位置の高さを感じるものの不安感はない。それはビート時代になかった新技術!横滑り防止装置によるところも大きい。ある意味、誰でも扱い易いコンパクトミドシップカーの登場だ。クルリと回ればガツン!とアクセルONで、ミドシップらしいトラクションがかかるメリハリのある走りが可能だ。
大げさに言えば、街中を全開でゴーカート感覚で駆け抜けられる!しかし、そんな気分でも違法なスピードまで上がらない範囲に収まる絶妙なパワーとギヤ比のセッティングだ。あと少し低いギヤ比ではガーガーとエンジンが唸って、いつまでも速度が乗らない車になる。速度の乗りはユーノスロードスター1600(NA6CE)と同等レベルかちょっと遅いか?と言った感じだ。
繰り返すがこのカタチ、このコンパクトさ、この走り感は世界唯一のものであり、完成度はかなり高いもの。正直、期待したほどパワー感がない!アクセルオフしても回転の落ちが遅いなど、細かいアラを探せば足らない部分があちこち見えるが、それはオーナーが買ってから手を加えることできっと改善できるのではないかと思う。
ショーモデルをそのまま市販してしまったようなこのホンダの割り切り、潔さに驚き、関心し、感動が今も絶えない。ショーモデルを作るのと市販するのはまるで異なるからだ。
私はこいつに本当にエンジンが載って、みんなが買える値段と信頼性を持って街を走るところまで来るとは思ってもみなかった。そういった意味では奇跡のクルマだ
S660 6MT カーニバルイエローⅡの試乗車に乗せてくれたホンダカーズ神奈川北 麻生店のみなさん、ありがとうございました!
関連情報URL : http://www.honda.co.jp/S660/
自動車研究家
出来 利弘