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新車試乗記
新型デミオ 15 MB 試乗 インプレッション『これぞデミオ、これぞマツダ!』
新型 デミオ 15MB に 試乗したのでインプレッションを書いた。
2015年10月22日に追加発売となったマツダ デミオ15MB (1500cc ガソリン)6MT、ベース車重 1000kg、
ベース車両本体価格 150万1200円(税抜き139万円)の市販バージョンをミニサーキット、ワインディングで試乗する機会を得た。
その走りは、全てに渡って実にデミオらしく、マツダらしい、素晴らしい仕上がりのクルマだった
DEMIO 15MB 6MT ベース車両本体価格 150万1200円(税抜き139万円) DJLFS
試乗車はこれにユーティリティーパッケージ(6万円+消費税)、特別塗装色スノーフレークホワイトパールマイカ(3万円+消費税)、その他マツダスピードエアロパーツ他のオプション装着車両。
ユーティリティパッケージの内容は、5.5J×16インチアルミホイール&185/60R16 86Hタイヤ、ダークティンテッドガラス(リアドア、リアゲート)、6:4分割可倒式シートバック、CDプレイヤーの4点。
マツダスピードエアロパーツ(フロントアンダースカート、サイドアンダースカート、リアルーフスポイラー、リアアンダーガーニッシュ、ドアミラーガーニッシュ、サイドデカール(アッパー&ロア)、ホイールデカール、シャークフィンアンテナがオプション装着されていたがオプション価格は未確認。2015年12月より5.5J×16インチアルミホイール&195/55R16 87Vのファルケンタイヤも6万円+消費税でオプションに加わった。
デミオ15MBの走りを一言で表現するなら『これぞデミオ、これぞマツダ!』
私がイメージしていた『マツダの走り』にやっとしっくりくるクルマが出た!
デミオ15MBは走り出しから軽快で楽しさに溢れていた。
エンジンは小気味よく軽快な吹け上がり、ミッションは適切なギヤ比のステップを刻み、シャシーセッティングはドライバーの操作に機敏に反応し、FFでありながら、『NA/NBロードスターを作ったマツダらしいな』と思わずニヤニヤとしてしまった。
<15MBはエンジンをかけ、ギヤを1速に入れて走り出す瞬間から楽しい!>
『基本に忠実に作られた4気筒の内燃機関エンジンに火を入れ、クルマを走らせる』。少し大げさに言えば初めてクルマの免許を取り、自分のクルマを走らせた時のワクワク感、ドキドキ感がどこかにある。質素なエントリーモデルでありながら、クルマが伝えてくるインフォメーションは骨太でドライビングの基本をしっかりと教えてくれる。それを乗りこなそうと試行錯誤しながら走る。上手くいけば気持ち良く、失敗した時にはそれではダメだとクルマが教えてくれる。そこにドライビングの上達と喜び、出来た時の達成感がある。
こんな、ひと昔前ならば、当たり前だったことが多くの新車たちから体感できなくなって、かなりの年月が過ぎた。
『なんだ、やれば今の環境の中でもこの走りで販売できるんだ!』
なんだか、とっても嬉しくなった。ハッチバックに乗る必要があるなら今すぐ欲しいくらいだ
具体的にはまず、エンジンの吹けあがりが自然で良い。電制スロットルの違和感は0ではないものの最小限だ。 中身はNDロードスターと同じエンジンということだが、パワー、トルク共に発生回転数が低めの設定のためか、こちらの方が発進からトルク感があり、元気がいい。アイドリング状態から、空吹かしでNDはワンテンポおいてから鋭く吹けあがるが、15MBはほどんどタイムラグなく吹けはじめ、その後は普通。いや自然というべきか。
SKYACTIV-G 1500cc ガソリン P5-VPS型 最大出力 116PS/ 6000rpm、15.1kgm/ 4000rpm
ギヤをローギヤ(1速)に入れて走り出した瞬間から、『楽しい!』
そう、マツダの4気筒エンジンに4.3ファイナルギヤの組み合わせは黄金比なのではないかと思う。今回のデミオは4.388ファイナルとややローギヤードでしかもデミオ初の6MTを採用した。歴代デミオの5MTではどうしても1〜3速のギヤ比が離れていて、トルクの落ち込みを感じたが今回はかなりクロスレシオ!しかもギヤ比が適切でかなり気持ちいい。ギヤのステップはちょうどNA/NBの5MTの感覚に近い。更にトップに6速があるから、高速実用燃費も良さそうだ。シフトフィールはFFとしては十分節度のあるものだ。
(6速のギヤ比は3.585/ 1.904/ 1,290 /0.972/ 0.795/ 0.645)
<シャシーセッティングは秀逸>
まず乗り心地がいい。すっきりしていて、決してゴツゴツしすぎていないし、ダンパーもしっかり仕事している感じだ。車高も少し低められているのがちょうど良い効果を出しているのかもしれない。仕様変更はないそうだが、年次改良で個体差調整が進んでいるためだという。
他のデミオも進化しているはずだ。
コーナリングするとステアリングを切った分だけ、軽快にシャープにコーナリングする。
ZOOM ZOOMを語り出した頃の初代アテンザやNBロードスターなどを思い出すシャープさがある。もちろん市販車の範囲だが、これぞマツダだ!っと感じた。ゆっくりしなやかな動きの最近のマツダが好きな人もいるのだろうが、オレはこちらの方が好みだ。これは15MBだけではもったいない。是非、普通に15スポルトも設定して、6ATモデルも設定して、多くの人に乗ってほしい。それほどに基本に忠実で実に真面目な走りとセッティングだ。
<15MBに乗って気分が爽快になった!>
デミオ15MBを試乗できて本当によかった。なんか胸のところでモヤモヤしていた悩みが晴れた気分だ!
クルマは肩に力が入っておらず、『普通に乗って、普通に楽しい』。
私がマツダ好きになったのは『NA/NBロードスターやデミオの小気味良い走り、この軽快感だったのか!?』と今回、改めて再確認できた。
また『運転の練習に適している』ということも大事なポイントだったのだと思う。
15MBは間違いなく『運転の練習に適しているクルマ』のひとつだと思う。
『運転の練習に適している』とはどういうことか?
それはおしゃべりの出来るクルマ。
上手乗れたら、それに応えてクルマがいい走りをして「今の運転、上手だったね」と返してくれる。
ちょっとラフに扱えば、「それは違うよ、ちゃんと乗って!」とクルマが教えてくれること。
それがあるからマツダ車がみんな好きだったのかもしれない。
最近のマツダは確かに良くなった。誰が乗ってもどう扱ってもしなやかに加速、減速、コーナリングができるのだが、ちょっとラフに乗ってしまい、「しまった!」っと思ってもクルマがスルリとカバーしてくれる。「よし、今のは決まった!」とバッチリな走りをしてもいつもと変わらず85点コーナリングに収められてしまうのがとても気になっているのだ。一般的には誰でも乗れて良いのかもしれないが、これまで長年マツダファンだった方の中には私のように物足りなさを感じていた人もいるだろう。
「今のマツダ車は格好良いなあ」とは思いつつも「買ってチューニングしたら、自分好みにできるのだろうか!?」「時代の流れ、制御で仕方ないのか!?」といったことが、気になっていただけに、今回の15MB体験はとても有意義なものでした。
『なんだ、やれば出来るんじゃん!』
嬉しい。デミオ15MBは気持ちいい。ということはNDも同じようにチューニングできるだろうし、他の最近のマツダの新車、あるいは中古車を買ってきてもセッティングしだいで同じように・・・??これは楽しみになってきた。
あれこれと妄想が膨らむ
自動車研究家
出来 利弘
ND ロードスターNR-A 試乗インプレッション
http://www.d-technique.co.jp/magazine/2015/11/nd-nr-a.php
NDロードスター NR-A 試乗 インプレッション『NDロードスターの本命登場!』
新型NDロードスターNR-Aに試乗した。
(写真はNR-Aレースバージョン アークティックホワイト。ロールバー(14万9040円)、ロールバープロテクター(7992円)、けん引フック(前後各1万800円)、ブリッド製バケットシートはオプション)
2015年5月にNDロードスター試乗記『ND新時代の到来』を書いてから4ヶ月。9月のメディア4耐レース会場で早くもNR-Aグレード追加の発表と展示があり、マツダロードスターND NR-Aを研究するを書いた。
新型ND マツダロードスター NR-A(1010kg) 6MT ジェットブラックマイカ
車両本体価格 264万6000円(税抜き245万円)
10月22日に正式発売となったNR-Aの市販バージョンを箱根のワインディングで試乗する機会を得た。
NDプロトタイプに近い低めの車高にシルバーホイールが爽やかなNR-Aのサイドビュー。ボディカラーがブラックのため、ブラックアウトされたピラー、ミラー、ハイマウントストップランプカバーは目立たない。
NR-Aはビルシュタイン社製Cリング車高調整機能付きスポーツタイプダンパーを装備しており、スポーツサスペンションでバネレートもアップ。
写真の試乗車は車高を一番下まで下げた状態(約20mmダウン程度)にセッティング済み。
早速NR-Aのコクピットに乗り込む。試乗車はオプションのアルカンターラが各部に張り込まれていたが、ステアリングスイッチを持たないシンプルな本革ステアリング&ウレタンシフトノブ、ブラックで統一されたエアコンリング、ドアの内側ボディ同色部もブラックのため、落ち着いた大人の雰囲気に癒される。
ファブリックシートはS、Sスペシャルパッケージと同じもの着座位置は低めで座り心地も良好。シートの適度な質感とインパネ周りの質感に統一感があり、ロードスターらしく、ライトウェイトFRスポーツらしい
<やっとしっくり来るNDロードスターに出会えた>
NR-Aは走り出して、第一印象がとても良かった。全域に渡ってこれまでのNDとは異なり、ワンランク上のダイレクト感ある走りを実感できた。ギヤをローに入れて、スタートした瞬間から駆動の伝わり方が気持ち良い。ギヤをシフトアップして加速すれば軽快かつダイレクトな走り感だ。シャシーはソリッドな感覚でステアリングを切ればこれまでのRS、Sスペシャルパッケージ、Sなどとは別次元のシャープな回答性が得られる。やっと歴代モデルに通づるロードスターらしい走りをNDで感じられた。これならばNDを買いたいという従来型のオーナーにもオススメできる。
乗り心地はNR-Aだからといって決してハードなものではなく、『これが標準モデルでよいのでは?』と思うほどだ。段差を乗り越えても瞬時に衝撃を吸収し、フラットな姿勢を保つシャシーのセッティングは絶妙だ。ダンパーのフリクションも感じられないし、NB、NCのNR-Aモデルより良い乗り心地だ。箱根を1日中走っても乗っても筆者にとっては『大きな突き上げ』は感じられなかった。助手席でも『ワクワクする走りの楽しさ』を感じられ、長時間、快適に過ごせたのも印象的だった。FRスポーツ、オープンスポーツを気軽に楽しむ車として、また通勤など日常の足としても最適だと感じられた。
NR-AをNDロードスターのスタンダードと捉えるとそれ以外のNDはホイールベースが長い、2+2のスペシャルティカーだったのではないか?と思えるほど差が大きい。誰にでも扱い易いようにと施されたセッティングだったのかもしれないが、スポーツカーを名乗るのであれば、このNR-Aレベルの機敏さをスタンダードセッティングとし、スポーツモデルには更にスポーティさを求めたいと感じるほどだが、そこはアフターパーツ、チューニングの世界となるのか
<人馬一体の領域に入ったハンドリング>
NR-Aのハンドリングは自然なものとなった。ステアリングを切り込めば素直に反応し、ターンインを始める。クリッピングポイント(イン側によるところ)にスッと狙い通りのラインと姿勢で持っていける。立ち上がりはステアリングを戻しながら、加速。リヤタイヤのグリップ感を確かめながらアクセルを踏み込んでいく。そんな普通の走り、あるいはスポーツドライビングがごくごく自然に行える。
これまでのND(RSも)はコーナー入り口で拳ひとつ分くらいステアリングを切り始めても反応が鈍く、遅れてゆるりとコーナリングを始め、コーナー出口でステアリングを戻しきれないままアウト側まででていき、直線に入ってからステアリングをまっすぐに戻すような動き、すべてがオブラートに包まれ、節度ないハンドリングだった。クリッピングポイントではスポーツカーとしては蛇角もロールも大きく、ブッシュが動くのか、ムズムズとトー変化が大きかった。『乗り心地重視でノーマルだから仕方ないか』と思う一方、リヤの接地圧が路面と関係なく一定しない違和感は拭えなかった。直進安定性が低かったことも大いに不満だった。
ところがNR-Aは違う!高速走行でもしっかり真っ直ぐ走る直進安定性がある。だからコーナーリングもピタリと決まる。スポーツカーというか、クルマにとって非常に重要な基本性能をしっかりと見直ししてきたことがハッキリと感じられる。
ブレーキもいい!効きも良いし、踏み加え、抜きのコントロール性も向上した。
冷却フィン付きデフケース、強化トルセンLSD、ビルシュタインCリング車高調整式スポーツダンパー
大容量ラジエターでスポーツ走行時の冷却性能アップ。フロント サスタワーバー、トンネルブレースバーでボディ補強
<すべてが見直されたNR-Aのメカニズム>
どうしてこれほどまでにNR-Aは進化したのか?
私が大きく進化を感じたのはボディのしっかり感。サスペンションのしっかり感、駆動系のしっかり感だ。
つまりNDはNR-A登場から、全体的に『とてもしっかりとしたクルマ』になった。
まずボディがいい。ボディ補強としてフロント サスタワーバー(ストラットタワーバー、エンジンルーム内のV字型のバー)、トンネルブレースバー(ロワアームバー、フロア下側から見た部分のバー)などが入り、しっかり感が増している。これらは重量増となるが、NR-Aは余計な豪華装備は省かれているので、1010kgと軽量だ。大径ブレーキまで奢って、この重量は立派なものだ。これらの補強によってボディがしっかりしたことでサスペンションがとてもスムーズに動いている。NR-Aはバネレートも上がっているがむしろSスペシャルパッケージより柔らかくしなやかに感じるほどだ。ND発売から僅か5ヶ月でこの改良はこれまでにロードスターを買ったオーナーはかなり悔しいと思われるが、この補強とNR-Aサスキットの装着は流用候補のひとつとして注目だ。
そしてもうひとつ、NR-Aは電動パワーステアリングのセッティングが異なり、よりシャープなものとなっている。この効果も大きい。これも是非、他のモデルにも流用してほしいものだ。
そして駆動系のしっかり感。これはNR-Aが輸出用2.0リットルモデルのものと思われる強化ドライブシャフト&プロペラシャフト、強化トルセンデフ、強化P.P.F(パワープラントフレーム)を採用していることに起因すると思われる。
『そんな僅かな違いがわかるはずもない』と思っていたのだが、RSやSなどと再度乗り比べてみてもこのNR-A試乗車の『駆動系の硬質感』は感じられた。シフトフィールも心なしかカッチリ感が増したように思われた。これだけ質感の高い走りなら、他のモデルにも是非、拡大採用してほしい。
<NR-Aが見せたND熟成の可能性>
NR-AはFRスポーツカーとして、ロードスターをこよなく愛してきたユーザーに『これぞロードスターだ!』と思わせる資質をもったモデルだ。『やっと納得のいくNDロードスターに出会えた』という人もきっと増えるに違いない。
NR-Aは来年度から始まるパーティレースIIIをはじめ、数多くのワンメイクレースなどで活躍する予定だ。イコールコンディションで展開されるレースだけに初期モデルのNR-Aのセッティングレベルには注目していたが、完璧とは言えないまでもひとまず納得いく走りにまとまっていたことにホッとした。このセッティングなら、FRスポーツカーとして、昔からのロードスターファンでも納得するだろう。
しかし、エンジンのアクセルに対するレスポンス遅れだけはまだ残っており、特に街中でよく使用する4000回転以下でのアクセルの『ツキ』と回転落ちに不満が残る。まだまだ熟成してほしいポイントだ。
NR-Aの登場によって、これまでのNDもチューニング次第ではNR-Aに近いシャープな走りを楽しめるであろうことが解った。NDは後退したドライビングポジションや電動パワーステアリングの全車採用など、これまでのロードスターと異なるフィーリングを感じ、歴代ロードスターのように後からのチューニングでは補いきれない部分があるのではないか!?と不安があったが、『チューング次第ではいい車に育つ』ということが今回の試乗で実感出来た。
『NDロードスターをどう育てていくのか!?』
『育てる』とうのはお金をかければよいなど、過保護に甘やかすことが必ずしも良い結果をもたらすことではないのは人もクルマも同じであろう。これから10年、20年、それ以上とロードスターあるいはライトウェイトFRスポーツが生きていくために、何が必要なのだろうか。やはりそれは『基本に忠実な走りとクルマ作り』これにつきると思う。
もし、マツダがその道から外れそうになった時には、時に厳しく、ロードスターに対して率直な意見を述べることも必要だということを我々ユーザーも忘れてはならない。
『ロードスターの未来は世界のライトウェイトFRスポーツの未来に大きな影響を与える』
ちょっと大げさかもしれないが、ロードスターとはそういったベンチマークとなる立ち位置にいるクルマ。
世界に誇るべき『日本の宝』のひとつなのだ。
自動車研究家
出来利弘
NDロードスター研究
2015年3月 NDロードスタープロトタイプ試乗
2015年5月 NDロードスター試乗記『ND新時代の到来』
2015年9月 マツダロードスターND NR-Aを研究する
MAZDA ROADSTER NR-A 公式サイト:http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/nr-a/
MAZDA ROADSTER PARTY RACE 公式サイト:http://www.party-race.com
NDロードスター試乗インプレッション『ND新時代の到来』
新型NDロードスターに試乗した。
3月の市販プロトタイプ試乗記を書いてから2ヶ月。市販バージョンを5月20日に正式発表、21日発売となり、 新型マツダロードスター NDの全てのグレードに試乗する機会を得た。最もベーシックなS (990kg) 6MT 249万4800円、Sスペシャルパッケージ (1030kg) 6MT 270万円、Sレザーパッケージ 6EC-AT(アクティブマチック、1060kg) 314万2800円の3台でS以外はi-ELOOP+i-stop装着車。
私はロードスターをNA(初代)、NB(2代目)、NC(3代目)と何台も乗り継いでいて、本当に好きなクルマのひとつ。先代NCロードスターの2.0ℓ170PSに対して、新型NDロードスターは1.5ℓ131PSエンジンへと排気量とパワーが絞られているがボディやサスペンションなどアルミを多岐に渡って使用するなどコストをかけた軽量化技術が投入され、最軽量モデルのSでは車両重量990kgを達成している。全幅は歴代でもっとも広い1735mmだが、全長は3915mmと歴代で最も短くコンパクトとする割り切った設計とするなど新世代ライトウェイトスポーツの理想を目指したマツダの意欲作だ。
NDロードスターのデザインは内外装の質感の高さと相まって歴代ロードスターの中で『大人のスポーツカー』を最も意識するモデルだ。野生動物、チーターを彷彿とさせるものとし、フロントノーズ先端部は低く、ワイルドだ。実際のクルマよりも大きく、存在感がある。一方でリヤはワイドに張り出したフェンダー、上部をコンパクトに絞り込み、シンプルな丸いテールランプを配置するなど愛らしさとコンパクトさが感じられるデザイン。両極端な2面性を持ち、サイドビューは特徴的な『逆ウェッジシェイプ』を描き、上部から見ればディアドロップ形状にも見えるような躍動的で抑揚のあるデザインを採用している。これまでより1クラス上のスポーツカーや輸入車を所有していたユーザーが思わず振り返るそんな存在感のある独特のデザインだ。『格好良く、ちょっと都会的でオシャレ』という今のマツダブランドを象徴するモデルと言えるだろう。
<とにかく乗りやすい新世代ロードスター>
NDロードスターの『走り』を一言で表現するならば『誰もがライトウェイトFRオープンスポーツの走りを気軽に楽しめるクルマ』スポーツカービギナーにとってエントリーしやすく、間口の広いセッティングだ。これまで歴代ロードスターがもっていたクイックなステアリングやダイレクト感溢れるシフトやスロットルなどによる楽しさ。これらと引き替えに持っていた乗りにくさ、扱いにくさといったネガティブな面(これらはほんの僅かだが)を徹底して改善に次ぐ改善を行い、とにかく乗りやすく、みんなにスポーツカーの気持ち良さを感じられるようにと、今のマツダが考えるライトウェイトスポーツのあるべき姿を具現化したモデルだ。誤解を恐れずに言えばちょうど先日、提携関係を結ぶと発表されたトヨタ的な親しみ易さがプラスされたロードスターとも言える。
<エクステリアデザイン>
キリリとした鋭いデザインは歴代ロードスターとは一線を画すもの。小型LEDライトの採用により、精悍なイメージとなり、フロント部の存在感は歴代で最も大きい。ボディ面の質感がとても高く、上質なプレミアムカーに迫る雰囲気が漂う。ただし、量産市販バージョンは車高が少し上がり、ホイールハウスの隙間が30mm程度広がった。ボンネットとフロントフェンダーとの隙間も若干広がり、白いボディカラーでは少々、気になるというのが正直なところだ。
<NDロードスター 公道インプレッション>
ベーシックなSに乗り、ギヤを1速に入れて走り出す。ボディの軽さを感じさせる軽快な走り出しが爽快だ。エンジンもフリクション感が少なく軽快に回り、乾いたエキゾーストノートと息の長い加速感が続く。シフトフィールはスムーズで各ギヤに吸い込まれるようにシフトアップ出来る。速度がスルスルと上がっていくスムーズさ、軽やかさが印象的な爽やか系の走りだ。もし初めてオープン2シーターに乗るという人は今まで知らなかった風を感じながら走る世界に夢中になることだろう。サスペンションはしなやかに路面を捉え、軽量スポーツカーにありがちなコツコツとした突き上げや硬さは感じられない。まさに『大人になったロードスター』であり、あたりはとても優しい。クルマの動き、ロール量は大きめに設定され、アグレッシブなフロントデザインやセンターにタコメーターを配置するレーシーなコクピットから想像するよりもずっと洗練された走りで普通にロードスター感ある走りを堪能できる。
エンジン、ミッション、デフレンシャルギヤを含め不快なノイズがよく抑え込まれ、パワートレイン系の質感の高さが感じられる。エンジンは低速、中速、高速とどの回転域でも扱い易く、フラットなトルク特性。ギヤ比のセッティングはちょうど歴代5MTのロードスターに近いものに6速がオーバードライブで追加されているようなイメージ。NB、NC時代の6MTのように急かされる感じはない。回しても流してもちょうど良い、絶妙なセッティングだ。このギヤ割りは良い。発進時とシフトアップした直後のトルク感も上々で車体をグッ、グッと前に押し出す。その後、落ち着いてから伸びるように加速度を増す特徴的なセッティング。まさにNDのボディサイドデザインのようなグッ、ギュ、プォーン!っという感じの加速で車速が乗っていく。
このSとATモデルはリヤスタビライザー、トルセンLSDが未装着。以前、市販プロトタイプバージョンに乗った時には着座位置が後ろであるためかリヤが回り込む際に違和感を感じたが、今回の量産モデルはNA、NB、NCからでもそれほど違和感ないように進化している!またコーナリング時にSスペシャルとの明確な違いはプロトタイプの時ほど感じられなかった。僅かにSスペシャルのロール剛性が高く機敏なのかな?と思った程度であり、よほど敏感なドライバーでない限り、街中ではその走りの差に気が付かないだろう。
今回の試乗で最も驚いたのは6AT仕様の完成度だった。スポーツ走行のようなシーンではもちろん、6MTの方がダイレクト感は上で適しているが、街乗りに関してこの6AT仕様モデルの走りも素晴らしいものだった。デュアルクラッチ、CVTなどある中、このトルコン式ATはシフトダウン時のブリッピング(空吹かし)も的確に決まる上、ロックアップ領域を広げるなどのセッティングが功を奏し、使い易いパドルシフトでついつい回して楽しんでしまうほどの走りの良さを実現している。このしなやかな足廻りやハンドリングには6ATの方が『走りのリズムが合っている』と感じられた。
<現代の燃費性能を持ち合わせたスポーツカー>
また試乗車は高負荷での走行が続いているであろうにも関わらず、燃費計は12.6km/ℓを指していた。走行フィールから推測すれば日常燃費は14km/ℓ以上くらいでは走れるだろう。これは街乗りで10km/ℓ程度とスポーツカーとしては比較的低燃費だった先代までのロードスターからの更なる大きな進歩である。この抜群の燃費性能と走りの楽しさの両立がNDロードスターの最大の魅力だ。長時間乗れる機会があれば実測燃費も計測してみたい。
エアバックは世界最小サイズ。ドライビングポジションは自然で乗りやすく、車両感覚も掴み易い。先代NCはやや斜め後方が確認しづらかったが、NDは視界も良好。本革シート、ファブリックシート共にホールド性が高く、座り心地は良好だ。
ドアトリムパネルは上部がボンネットデザインとつながる新しいデザインテーマだがボディ同色で各色設定される!(なかなかコストがかかるこだわりだ)。レザーが張り込まれた内張りは大人の雰囲気でデザインされ、高級感に溢れる。ただしこのドア、開ける際には要注意!あまりに軽い操作感で、いきなりドバーッと全開になってしまうことがあり、隣のクルマや壁にドアパンチしてしまいそうだ(笑)。もう少し中間で止まるように早期改良を望みたい。
最近のマツダ車の例に漏れず、ペダルは自然な配置、長時間走行でも正確なアクセルワークが行い易いオルガン式を採用。ただスポーツドライビングにおけるヒール&トゥはでは吊り下げ式の方がより繊細にアクセルコントロールし易いのではないか?とも感じる場面もあった。フットレスト後方の膨らみは触媒を避けるため
細身のステアリングの形状、本革の質感、感触がとても良い!ステアリングスポークのシルバー部まできちんとデザインされている。電動パワステは軽めのフィーリングが好きなユーザーは慣れれば問題ないレベル。ただし切り始めのカチャっとなる感じと中立付近での曖昧なステアリングフィールはせっかくのFRなのだから、もう少し熟成して欲しい。
シフトノブは初の丸型形状、本革の質感が良い。ギヤ比のセッティングは絶妙で長年ロードスターを作り続けてきたマツダのノウハウが詰まっている
メーターはロードスター初のセンターメーター。インジケーターの液晶表示やメーターリングなどの質感は高く、センターメーターというとレーシーな雰囲気でありながら、上級スポーツカーに乗っているかのようなやすらぎと高級感がある。
運転席に座ってボンネット裏のボルト&ナットがむき出しに見えるのが気になる。86/BRZやZ34などでは上手く隠されていて気にならないがNDはメーター脇からまる見え。プレミアムを名乗るなら、カバーをつけるなど対策して欲しい。
プロトタイプで私が感動したボンネット内のボルトを隠すカバーも国産コンパクトカーに用いられる一般的なラバーに変更されている。量産ではボンネットとフロントフェンダーのクリアランスが広がってしまったため?内部の前側のボルトが外から見えてしまう。ホワイト系ボディでは目立つのがプレミアムカーとしてはちょっと残念。これもロードスタークラスとしてみれば笑って許せる範囲か
インパネの質感はプラスチックは一般的な質感だが、これくらいがロードスターらしくて好印象だ。Sとスペシャルパッケージはこれが標準。レザーパッケージはレザー張りとなり、ステッチも入りプレミアム感がアップ。グローブボックスはスペースと軽量化のために設定されていない
追記:SスペシャルパッケージではAUX、USBなどのジャックはシフトノブ前に2つあり、Sでは未使用時のためのカバーがある。スポーツカーではほとんど使わないユーザーもいるので上級グレードにもカバーが欲しい
車両説明書などはセンター後方のボックスに収納される。奥行きがあり、かなり使える
最新エンジンSKYACTIVが載ったのは歴代ロードスター初。1.5ℓは完全フロントミドシップに搭載されている。エンジンルームはオーナーが楽しめるようにとアルミのフラットなカムカバーが設定されるなど工夫されている。吸気はフレッシュエアが導入できる好位置に配置するなど長年ロードスターを作り続けたマツダならではの洗練されたデザインのエンジンルームだ。左右のフェンダーでっぱりはダミーなのでストラット上部までの距離はかなりある。
エンジンは1500ccのプレミアムガソリン仕様でND専用チューニングによって131PS/ 7,000rpm、15.3kgf・m/ 4,800rpmを発生。鍛造クランクシャフトを採用し、レッドゾーンは7500rpmと高回転化を可能とするSKYACTIVシリーズで最も自然で気持ち良いエンジンだ。全体として静かでエンジン音より乾いた排気音が軽快に聞こえてくる。軽快な吹け上がりはもちろん、吹け落ちも素早くなり、スポーツドライビングへの気持ちを熱くさせる。軽量フライホイールの効果もあると思うが、これらはプロトからフィーリングは大きく進化。現代の厳しい排ガス規制の中、このエンジンお吹け落ちのスピードは納得のいくものだ。『現代に求められるエコ性能の基準をクリアした上での軽快な吹け上がりの実現』言葉にするのは簡単だが決して容易なことではない。マツダの技術者たちの情熱(執念?)を垣間見れる部分だ。
テールはかなり絞り込んでいてコンパクトで優しい印象。NAと比べても上部はかなり絞り込んでいる。
トランクは開口部が歴代で最も狭いですが、深さがあり、飛行機の機内持込サイズのバックが2個収納可能。トランクリッドもアルミ製。
歴代ロードスター大好きな私ですが、「今、NDロードスターを買うか!?」と聞かれると現状ではまだその気になれない。今ひとつピリッ!としたモデル、あるいはベース車として手頃な価格のモデルがないからだ。
今回のNDロードスターは次の10年に向けて販売していく計画で順次魅力的なモデルが追加される可能性がある。海外では2.0ℓで160PSモデルも存在し、これはきっとブレーキ、ミッション、デフなども強化されたモデルだろう。日本向けに発売されるとすればNB時代に習って考えれば『RS』というモデルとなり、ビルシュタインと大径ブレーキ、大型ラジエター、フロア補強が追加されるのであろうか。グローバルカップカーのベースとも言えるこのモデルの存在はとても気になる。
この2.0RSがあるとしたら、その装備で1.5ℓを積んだモデルは『NR-A』となって発売されるのだろうか。パーティレースのベース車がいつ発売されるのか?メディア4耐あたりで公開か?もし出るならばスタビ、トルセンLSDが装備され、装備はシンプルであろうこのモデルも気になる。更にRHT(リトラクタブルハードトップ)モデルも追加されるのでは?という噂やクーペ(クローズド)モデルもありそうなデザインにも見える。また兄弟車でフィアットかアルファか、アバルトからのバージョンが出そうなことも気になる。もしそれが噂通り1.4ℓターボで出るなら、NDに1.5ℓターボモデルなどはでないのか?トヨタとの提携によって、トヨタからも数年でロードスターの兄弟がでるのではないか!?など妄想は膨らむ。これからの展開が楽しみだ。
私は26年前、デビューしたばかりのユーノスロードスター(初代NA6CE)のスペシャルパッケージを買った。しかしそれはサスペンションがソフト過ぎて走りに特化していた私は我慢ができず、KONIとレーシングビートサスを入れて乗っていた。峠ではビスカスLSDの効きの弱さに閉口し、機械式LSDが欲しい!バケット欲しい、エンジンチューンしたい!と思っていたところでM2が発売され、ショックを受けた。その2年後に中古のM2 1001に出会い、乗り換え、今まで20年以上乗っているといった経験がある。
その後、ロードスター2台所有した際もNB8CはRSモデル、NB6CはTD-1001R、NCはNR-Aだった。その時もSやスペシャルパッケージは存在していたが、私が選択したのはスポーティモデルだった。だから『オレのND』はまだ発売されていないのだ。ここで買っては26年前と同じ過ちにまた後悔することだろう。NA時代の苦い経験は忘れません(笑)。
NDは『歴代も最もコストと時間をかけて開発されたロードスター』として歴史に残る存在になるだろう。いつかは所有してみたい気持ちもあるが、現状NDのラインナップモデルはかなりソフトなタッチであり、すべての操作に対して『オレとしては』スポンジーに感じ、正直NAのようなシンプルなダイレクト感は得られなかった。もちろん、近年のマツダ車SKYACTIV軍団の中では最もダイレクトでスポーティなのだが、クラッチやステアリング、ブレーキング、アクセルなどどのように操作しても『普通に走ってしまう』ことが不満という、なんとも贅沢な悩みなのだが、私がロードスターに求める感覚とはまだ一致していない。
一方で『この親しみ易さこそロードスターだ!』『オレには十分に刺激的!』と感じられる人にはこれがベストであり、エントリーモデルとして『FRやスポーツカーは敷居が高い』と感じていた人にとってはステップのひとつとして買っても良いモデルだと言えるだろう。そして『もっとピリッ!とした走りが欲しい!』という私のような人たちに対してはきっとマツダがRSやNR-A、または低価格ベースモデルなど、遠くない将来に出すことを考えてくれるであろう。
今はこのFRライトウェイトシャシーをマツダが開発し、発売してくれたことを素直に喜び、今後の改良と熟成、そしてスポーツ走行が大好きなロードスターファンが欲しくて堪らなくなるような追加モデルを期待したい。
最後に今回貴重なND試乗の機会をいち早く与えてくださった湘南マツダ平塚店のみなさん、ありがとうございました!早速 S スペシャルパッケージを乗せてくれた友人にも感謝です。ありがとう!
関連情報URL : http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/?link_id=rsmag06
自動車研究家
出来 利弘
追記:やはりNR-Aはあった!
NDロードスターNR-Aを研究するレポートを追加
http://www.d-technique.co.jp/magazine/2015/09/-nd-nr-a.php
ホンダS660 試乗インプレッション『S660の価値は世界唯一の存在』
HONDA S660に試乗した。2015年4月2日(木)に正式発売となったS660。試乗したαは218万円(税込)、βは198万円からだか走行性能に関する装備は共通。私はホンダビートとマツダロードスターと2台所有していた時期がかなり長期間あったので、久々に出たホンダのコンパクトミドシップスポーツに興味深々だ。
乗った感想を一言で言えば、『痛快ハンドリングマシン!』
小さなスーパーカーといった感じ。
S660は見るだけでワクワクし、クルマの周りには常に人だかり、カーマニアはもちろん、普段クルマに関心を持たないような一般の方々、通学途中の子供たちなどが寄ってきて「格好いい!」と言いながらずっと観ていた。
そう、まさしくスーパーカー現象。一般ディーラーの前でこんな光景を見たのはいったい何年振りだろうか。
格好良く、新しく、ちょっと可愛い。そしてそのサイズ感がどこか親しみ易い。
この感覚、これから先もずっと何年も続くのか?今だけなのか、それはまだ解らないが、今、この瞬間だけを捉えてもこれだけ、多くの人を幸せにしたのだから十分に価値あるクルマだ。
こんな格好いい、超コンパクトなスーパーカーが動くこと自体に感動する。
しかもそれは世界の頂点、F-1の世界で戦うホンダにしかできないパッケージングで完成されているものだ。
『S660は世界唯一の存在』そこにこのクルマの大いなる価値がある。
街行く人が振り返り、近寄ってくる。
フロントボンネットとエンジンフード開けた姿も格好いい
モーターショーで展示されたデザインコンセプトのイメージの再現度はかなり高い。
それを全幅1475mmという軽規格内で達成するレイアウト技術は世界屈指のもの。
これならワインディングでアウトインアウトのライン取りも自由自在だ。
低いボンネットとこのリヤデッキデザインはラゲッジスペースをほとんど持たないことで実現したデザイン。
フロントフード内は幌をしまうスペースがありますが、とても薄く、ラジエター直後のために熱を持ちますので手荷物は車内にしかおけないでしょう。身長170cmくらいのドライバーなら、シート後ろに薄いバックくらいなら置けるか?
絞り込まれたテールデザイン
ビート、ユーノスロードスター、S660
特徴的なドアノブが嬉しい。キーホールはかなり小さい
モーターショーのコンセプトカーを忠実に再現したドアミラー
コンパクトなヘッドライトはLED
テールもLED。未来的な造形でフロントとの統一感がある
センターマフラー!これは近年の国産市販車では稀少。
控えめなリヤスポイラーは速度が上がると可動するものが装着されていた
インテリアは未来的な造形でコクピット感覚に包まれる。
これもコンセプトカーのイメージにかなり近い
メーターはデジタルスピード計とその周りを囲むように9000rpmまで刻まれたタコメーター。
レッドゾーンは7700rpmから文字の書体が優しい雰囲気でクルマのキャラクターに合う
スイッチパネルの質感も上々。ハザードスイッチなどタッチも良い
助手席前のソフトパッドは適度な質感でスポーツコンパクトらしい
USBジャックカバーがあり、スマートにデザインされている。
手前にはスマートフォンなどを置くスペースがある
着座位置は低くドラポジがピタリと決まるコクピット。普通車のスポーツシートとして評価してもクッション性、ホールド性、共にノーマルとして申し分なく、妥協が感じられない。
革シートの質感
ステアリングの質感はデザイン、握り共に写真から想像するより、実物は良い。
カーボン調パネル類の質感などもちょうど良いライトな雰囲気。
電動パワステのフィーリングはとても自然でフィット流用とは思えない
軽自動車初となる6MTはギヤ比が実に適切で実に気持ちいい。これでクロスミッションのまま、6速化によって高速巡航への対応も可能。シフトフィールは横置きエンジンであるにも関わらず、スムーズでダイレクト感のあるもの。
クラッチは適度な重さで扱い易い。吊り下げ式のアクセルとブレーキ。ヒール&トゥーがし易いのがとても印象的だった。特にブレーキは素晴らしい制動力!
カーボン調ドアパネはプラスチックで、質感はそこそこ。オプションで質感をアップさせるパーツがある。
ドアの開閉音はしっかりとして上質な音に作り込みされている
しかしこのくらいのプラスチック感がちょうど良いのかもしれない
P/Wスイッチとリヤクォーターパネルウインドも電動P/W!
開けるとエンジン音がダイレクトに入ってきて、レーシーなサウンドを楽しめる。
もちろん換気にもなり、エアロボードのように風量を調整できる。
閉めれば静かで快適。助手席との会話も問題ない。
屋根を閉めてここを開けた時がもっともエンジンサウンドが大きい!
こんな遊び心のあるスーパーカー装備が標準とは実にホンダらしく素晴らしい。
(私なら仮に10万円オプションでも装着するだろう)
エンジンはミドシップ(運転席の後ろ)に搭載。横置きで少し搭載位置は高め。エンジンサウンドはDOHC3気筒ターボだが1300ccNAのようなフィーリング。スペックから想像するより普通なサウンドだが、16インチタイヤ(なんとアドバンネオバ!)をクロスミッションを活かしてグイグイと加速させる!レッドゾーンの7700rpmまでグィーン!という加速サウンドとシフトアップ時にはプシュ!というブローオフバルブのサウンドが楽しめる。5500rpmから最後は詰まり気味で(64PS自主規制のため?)、普通に乗るには嬉しいレギュラーガソリン仕様だが、これをハイオク仕様にして、マフラーとコンピュターで100PSくらいすぐにチューニング出そうなポテンシャルを持ち、それを封印しているかのように感じられる。
エンジン横スレスレのがっちりストラット周りと前後に貫通したボディフレームが頑丈そうで作りの良さに感心。
アルミサブフレームも仕様され、サスペンションの高い取り付け剛性を確保。ミドシップらしいリヤの接地性の高さと本格的なスポーツ走行に大きく貢献するだろう
サイズや質感のわかる写真
エリーゼが大きく見え、デザインの質感では負けていない
アバルト500と並んでも堂々としたサイズ感と質感が解るだろう
NAロードスター、マーチ、ベゼルとの並び
S660の走りは基本に忠実で素直なものだった。まさに楽しいスポーツカーへの直球勝負!走りのため、格好よさのために潔く割切られている。しかしその走りはホンダ往年のタイプRのようなカリカリではなく、穏やかにゆったり流して走っても楽しく、サスペンションはしなやかなものだ。コーナリング入口では荷重移動をそれほど意識しなくても曲がれる。ドライバー中心に旋回を開始する感覚はFR的でコーナリング開始後はエンジン重心位置の高さを感じるものの不安感はない。それはビート時代になかった新技術!横滑り防止装置によるところも大きい。ある意味、誰でも扱い易いコンパクトミドシップカーの登場だ。クルリと回ればガツン!とアクセルONで、ミドシップらしいトラクションがかかるメリハリのある走りが可能だ。
大げさに言えば、街中を全開でゴーカート感覚で駆け抜けられる!しかし、そんな気分でも違法なスピードまで上がらない範囲に収まる絶妙なパワーとギヤ比のセッティングだ。あと少し低いギヤ比ではガーガーとエンジンが唸って、いつまでも速度が乗らない車になる。速度の乗りはユーノスロードスター1600(NA6CE)と同等レベルかちょっと遅いか?と言った感じだ。
繰り返すがこのカタチ、このコンパクトさ、この走り感は世界唯一のものであり、完成度はかなり高いもの。正直、期待したほどパワー感がない!アクセルオフしても回転の落ちが遅いなど、細かいアラを探せば足らない部分があちこち見えるが、それはオーナーが買ってから手を加えることできっと改善できるのではないかと思う。
ショーモデルをそのまま市販してしまったようなこのホンダの割り切り、潔さに驚き、関心し、感動が今も絶えない。ショーモデルを作るのと市販するのはまるで異なるからだ。
私はこいつに本当にエンジンが載って、みんなが買える値段と信頼性を持って街を走るところまで来るとは思ってもみなかった。そういった意味では奇跡のクルマだ
S660 6MT カーニバルイエローⅡの試乗車に乗せてくれたホンダカーズ神奈川北 麻生店のみなさん、ありがとうございました!
関連情報URL : http://www.honda.co.jp/S660/
自動車研究家
出来 利弘
NDロードスターの市販プロトタイプを初試乗
ステアリングを切り込むと4WS車でトーアウトしているかのようにリヤが回りむ。これは今までのロードスターには感じらなかったもので違和感を感じた。これまでリヤのグリップ感(ある意味アンダーステア感)を頼りにブレーキングして、リヤタイヤの素直な動きを感じ取り、ドライブしてきたNA、NB、NCの感覚とは異なり、一瞬基準となる感覚を失うが、リヤタイヤに近いお尻が旋回しだしてからのオーバーステア感を感じやすい。同じようなサスセッティングであった場合に従来のNC以前のロードスターと比較してコーナー入り口で実際には安定している状態でもシャシーの安定性(アンダーステア感)を感じ取り難く、ターンインでステアリングを切ると実際にはフロントのタイヤがグリップして旋回が始まってもアンダーステア感が強く、大きな舵角を必要とするステアリング特性がそのイメージを増幅させる。ターンインが始まるとズルズルとリヤがオーバーステア感を伴って旋回する感覚を覚えるが実際のアングルは小さく、リヤは過剰に振り出されてはいない。わずか50mmの着座位置変更がこれほど影響するかはわからないが、電制ステアリング、サスペンション、ブッシュ、タイヤ、様々な要主張するハンドリングのイメージ。このリヤステアする新感覚をどう捉えるか?市販までには更なる熟成が進むのか、注目してみていきたい。ステアリングを戻しながら加速、ここでは違和感なく、気持ちよい加速が得られた。